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第35回 千倉・高皇産霊神社(たかみむすびじんじゃ)の参道

・千倉・高皇産霊神社について

 房総半島南端に近い千倉町、南房千倉大橋公園の北、約1.5kmに鎮座しています。海岸の町から、北西に真っ直ぐのびた長い参道の先に、山を背にした深い緑に包まれた中に位置しています。しかし、なぜか創祀は不明です。
 ある高皇産霊神の研究者によると各地の高皇産霊神について次のように言っています。抜粋「日本各地の霊山の山神を高皇産霊神とすることが多く見うけられる。大和盆地から吉野山地に入る入り口ともいうべき竜門山塊の主峰、竜門山にも高皇産霊神を祀る高鉾神社(吉野郡吉野町山口)がある。中略、抜粋「最後に海の結界にある高皇産霊神の社を紹介しておく。海を臨む丘や海浜の巨石は海神の世界の結界とされている。房総半島の太平洋に面した漁港、千倉の町の後背に高塚山があり、その山頂に高塚不動尊があった。今は麓の大聖院の不動堂に移されている。かつての高塚不動尊は不動尊奥の院として、関東一円の不動信仰を集めていた。この高塚山は太平洋に漁をする漁船の当て山(目印の山)で、山上に不動尊、中腹に高皇産霊神社を設けて、漁民を守ってきたと思われる。この高皇産霊神社から、三つの鳥居をこえて、水平線まで海が見渡せるようになっている。これは海の結界を守る高皇産霊神のいます山にふさわしいものがある。」と・・・この意見が創祀由緒にふさわしいと私も考えています。さらに背後の高塚山は古代より相模大山と同じ漁船のヤマアテでありましたが、名も無い山でした。高塚不動尊(妙高山・大聖院)の開山は、天平年間(729〜766年)東大寺の初代別当・良弁僧正は、生き別れになっていた母に再会できたものの、すぐに亡くなってしまいました。母の死を深く嘆いた僧正は、その報謝と追悼のため諸国修行の旅に出ました。その途中にここ安房の国に着き、裏山頂上に一宇の堂を設けたそうです。当然その時代の日本は神仏混淆(しんぶつこんこう)の時代で仏教と神道の神仏に守られていたのではないかと考えれば、創祀は不明の高皇産霊神社の歴史も高塚不動尊の開山と同じくらいかなり古いのではないかと推測できるでしょう。

御 祭 神
高皇産霊神(たかみむすびのかみ)
 日本神話で、高皇産霊神は天と地が初めて二つに分かれたとき、高天原(たかまがはら)に出現した神。天御中主神(あまのみなかぬしのかみ)・神皇産霊神(かみむすびのかみ)とともに造化の三神の一。天照大神とともに、高天原の至上神。生成の霊力を持ち、太陽神としての性格ももつ。別名、高木神(たかぎのかみ)。
 古代史の研究に於いて、おもな人物の出自はほとんど判明していますが、重要人物でありながら、いくら調べても正体不明なのが、この高皇産霊神です。

祭 礼:毎年1月28日、湯立神事、巫女舞。
住 所:千葉県南房総市千倉町千田1393
交 通:JR内房線「千倉駅」下車
安房白浜行きバス約17分「七浦小前」下車、徒歩約10分

・参道について
 ここの参道は千倉の海浜から両サイドのお花畑の中を真っ直ぐに山に向かって通っています。社殿の背後の山は高塚山(別称:妙高山)、前の山を竜護山と呼び古くから海上安全、大漁の守護神として漁民の信仰を集めていました。また、漁民にとっては海上からの目印の山となっていました。
 近年の高塚山麓は冬でも比較的暖かい南房総の気候を活かして、花の栽培、お花畑が広がっています。海の幸以外にも、花摘みなど観光地として賑わっています。

 海岸から山に向かい一の鳥居をくぐり、水田や花畑に挟まれた参道を進むと、やがて二の鳥居に至ります。その鳥居と境内に上る石段との間に、蔦にからまれた岩が、左から突き出ています。この岩には「蛇岩」伝説が残っています。さらに進み石段を上ると拝殿の前には小さい鳥居があります。この神社の参道の特徴は非常に遠くまでの見晴らしがよく、直線が長いことです。

 海岸から北西に長く伸びた、真っ直ぐな参道は他の参道ではあまり見かけることができないほどです。やがて一ノ鳥居まで進み、遠くの神社を眺め、ふと背後の山に目をやると、社殿の方角になぜか吸い込まれて行くような気になります。

 二ノ鳥居をくぐると社殿へ向かい石段となります。手前の狛犬を見ながら、上り切り、振り返るとそこには大パノラマ、海辺の町とその先に広々とした大海原を望むことができます。向き直ってさらに石段を上ると質実剛健な拝殿の前へ進み出ます。

 この神社の参道は海辺から遮るものが無く、長く歩む間、見晴らしが素晴らしい、また一の鳥居までは参道の両側には、季節によりお花畑の花が咲き誇っていて参拝者を迎えてくれます。また、参道を歩んで行く途中、ふと顔を上げると緑に彩られた背後の山々に包まれた社殿の佇まいが、たとえようもなく趣があります。この神社が山と海の結界の「ムスビ」といわれることにうなずける参道です。海浜から山々に向かう、この参道を歩むと山と海という自然の力によって強く力を与えられる気がします。創祀不明の神社ではありますが、この参道は古代ロマンの祈りに満ちた香りが充満している感があります。
by 恒十郎